2018年1月17日水曜日

018 五十肩や腰痛・坐骨神経痛にブロック注射が良いことが多い (2002.10)

18. 五十肩や腰痛・坐骨神経痛にブロック注射が良いことが多い  (2002.10)

先ず、私の既往歴から。大学5年生の時にギックリ腰を起こしました。3日程寝ていたが治らないので、大学の整形外科を受診しました。外来の椅子に長時間待たされた時に、変な姿勢で寝入ったのが良かったらしく、診察室に入ると「アレーッ、痛くない」ということで恥をかいて終いでした。しかし、以後しばしば軽いですが坐骨神経痛になっています。今では筋力不足と姿勢不良が時々の悪化に一因と思っています。
  15年程前、肺外科医で活動していた時に左の肩から上腕にかけて強い痛みが続き、左指の知覚も麻痺しました。手術中にピンセットを落とすようになり、「これは、えらいことになった」ということで、頸肩のレントゲン・頭のCT・頸のMRIなどの脳神経外科と整形外科の画像診断を受けました。頚椎に若干の変形があるのにはがっかりしましたが、結局は大きい異常がなく、そもそも仕事が忙しいので治療もなしで、それっきりです。運良く数ヶ月くらいで治りました。これも、数年に1回は再発しており、時にはひどくて、数日は安眠出来ないこともありました。次第に減っています。寝転がって本を読んだりした後や、朝の起床時などに再発していることがあります。今では肩腕症候群と思っています。

頚腕症候群の多くは、五十肩~肩関節周囲炎と大体は同義であり、痛くて肩を挙げられない状態を言います。多くは、肩や頚、特に肩の筋肉の疲労性炎症とそれが神経を刺激することの症状であるようです。レントゲンで一寸頚の骨に変形などがあれば、「これが原因かも」と安直に判断することには最近では整形外科医からも疑問と反省が語られています。骨の変形以外にも、レントゲンには写らない筋肉の炎症や循環障害などの問題も多いようです。
色々な原因があろうとも、何らかの契機で肩が痛くなって動かせなくなると、それ以後は動かないことが原因で筋肉の拘縮や癒着で関節が錆び付いてしまったごとく悪循環になる。一旦は無理矢理にでも動かして(非常に優しく繰り返し動かす必要があります)、錆び付いた動きを解除することが改善の契機になることもあります。そこで、ツボに簡単な局所麻酔薬によって神経ブロックをすると、一時的に痛くなく動かせる範囲が確保できます。しばしば抗炎症剤を麻酔薬に加えます。そのツボは基本的には肩甲上神経の走行部ですが、上腕二頭筋の長短頭付着部炎部が加わることもよくあります。深刻な原因のない五十肩の多くはこの治療を1~2回すると治って来られなくなります。牽引療法やマイクロ波などの理学療法はあまり有効には思えません。鎮痛剤の内服は意味があるように思います。以上は私が当院で積極的に行っていることです。簡単に治らない場合には、関節内のむずかしい変化かも知れないので整形外科を受診するよう勧めています。「胸郭出口症候群」という循環や神経が圧迫される特別の状態のナースが当院にいました。大学で治療でもなかなか難しいようでした。

ギックリ腰(体変後の急性腰痛症のことの総称)で腰筋に明らかな圧痛点がある場合で、早く治したい場合は局所に麻酔薬+消炎剤の注射をするのが良いと思われます。X線写真では所見のないことが普通ですが、腰椎自体に局所痛がある場合は圧迫骨折を認めることがあります。また、坐骨神経痛の痛み対策は坐骨神経のツボに麻酔薬のブロック注射が有効のことが多いです。大概は放っておいても数週間から数ヶ月くらいで症状が良くなることが多いので、それで良い方はゆっくりの覚悟で好いでしょう。鎮痛剤の内服はそれなりに意味があると思います。脊柱管狭窄~ヘルニア症状を疑ったり、痛みがコントロールできない場合は、整形外科に行ってもらいます。

 脊椎牽引という施療は健康な人にでも時々するのは良いことであるように私は個人的には思っています。牽引もマイクロ波もその都度痛みが改善する場合は正解かも知れませんが、早く治癒につながるという感触はないように思います。