2018年1月17日水曜日

004 生活習慣病について (2001.01) 

4. 生活習慣病について  (2001.01) 
昭和32年以来の「成人病」の名称が平成9から「生活習慣病」に変更されました。いずれも厚生省の制定です。名称が違うことですから、多少含まれる病気の種類も異なり得ますが、ほぼ同じです。すなわち、四十歳前後から増加してくる脳卒中・心臓病・がん・糖尿病などです。これは成人病の発症・進行には単なる加齢のプロセスではなく、生活習慣(ライフスタイル)が深く関与していることが明らかになってきたことと、そのライフスタイルが益々健康に悪い状況になってきていること、名称変更に迫られたものと思います。

私は名称変更の意義は理解できますが、その弊害もあると思います。それは内科診療をずっとしてきて実感していることです。それは「生活習慣だけによるものではない」ことの認識が抜けてしまうからです。つまり、「遺伝的要因」つまり個人差という要因と「加齢」つまり歳をとるという要因についての理解が抜けてしまうのが問題だと思います。私は成人病の方が含みもあってスマートで良いと思います。

情報化社会の現代では、テレビ・新聞・本・井戸端会議・そして医療機関などからの情報で、運動不足・食べ過ぎ・肥満・喫煙・飲み過ぎ・精神や身体のストレスなどで成人病になり易いことを知らない人はあまりないと思います。観念としては生活改善の重要性は知っているのです。多くの人は「判っちゃいるけど止められない」的な状況だと思います。ちゃんと工夫努力している人も少なくありませんが。

これからが本論ですが、よく受ける質問を書けば十分だと思います。「私は甘いものも脂っこいものも余り採らないようにしているし、散歩も毎日やっています。主人は暴飲暴食で運動は全然しません。それなのに、私だけがコレステロール高いのはおかしいなあ?」これはちっともおかしくはなく個人差が大きいだけです。「コレステロールが高いと言われますが、以前は高くなかったですよ。生活は変わっていないのにおかしいなあ?」これも以前より歳を取ったからそうなってきたのでしょう。

 例えば、もともとかなり良いバランスの食事をしているのに、コレステロール値がかなり高いと指摘されるや、さらに食事をぎりぎりに制限しようとする人がおられます。私はよく「仙人みたいですね」と言っています。一般的に言っても、食事療法で改善されることは期待出来ますが、必ず正常値(基準値)になるとは保証されていません。運動療法も同じことです。つまり、この人の食生活が悪ければもっとコレステロールが高かったはずで、今の食事でも十分意味がある場合もあります。こういう場合に、どうしてもコレステロールを下げたければ、薬の服用を考えねばなりません。人生観などから薬が嫌ならコレステロールが高いことを甘んじて良いのだと思います。個々の人の運命は判りませんからどちらが正解かは判りません。ただ、大規模統計的研究などから医療の標準対応は前者ですから、こういう場合に医師に判断を依頼される場合は薬の使用を勧めることになろうかと思います。


 一方、もともとの生活習慣が不適当ならその改善から始めるのは医療の常識です。この場合、継続的にその効果をチェックして、データー改善が不十分な場合は生活改善度をさらに強化することが本当に出来るのか、それとも薬物の助けも借りる方が良いのかを冷静に判断するのが現実的な対応と思います。