2018年1月17日水曜日

008 診察の時になぜ定期的に体重を測るのか? (2001.11)

8.   診察の時になぜ定期的に体重を測るのか? (質問箱から)  (2001.11)

今年から当院待合室に質問箱(ご質問やご不満やお叱りなど何でもお願いしたいのですが)を設けています。先日、初めて頂いたご質問がこのことでした。➜(注)後にも先にもこれだけでした。

身体の調子の良し悪しは先ずご本人が一番よく知っているはずなので、小生の立場からすると、やはり問診が重要です。つまり、ご本人の話をよく聞き出すという作業です。次に重要なのは複雑な検査などではなく、一見して元気がありそうかなさそうか、表情が冴えないかどうか、顔の色や艶などです。このことは診療所であろうが高度医療機関であろうが変わることはないはずです。その次に、体重や体温や脈拍・血圧・呼吸の状態・むくみ(浮腫)などが重要です。体重で言いますと、以前と体重が余り変化がない場合は、体調はそれ程変わっていないだろうというということで、逆に変化が大きい場合は何か変だという信号になります。

標準体重というのがあります。以前の計算法は、身長が標準から高い場合と低い場合において不適当な値になりますので、忘れて下さい。現在は身長(m)×身長(m)×22が標準体重とされています。BMIという計算値が体重の指標になっており、これは体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で示されますが、この標準値たるものが22という値です。つまり、同じ計算式を利用しているのです。この標準体重の値を利用して、その20%を超えるのを肥満や痩せと判断し、10%を超える程度はやや肥満またはやや痩せと判断します。

しかし、標準体重でないといけないとは限りません。身体の脂肪の多少が大きい要因でありますが、筋肉の発達の程度も関係があります。標準体重と同様に重要なのは、20歳台の時の健康であったと思われた時の体重が目標体重の参考です。
「体脂肪計」というのがあります。自分の脂肪の付き具合の参考になると思いますが、器具の標準化もあいまいですし、臨床上は体重と腹囲で判断することになっています。

今からが本論ですが、体重の重要性は疾患によって違います。糖尿病や脂肪肝などの人はそれ自身管理の重要な指標です。また、心臓や腎臓の機能に問題がある可能性の人にとっては、体重はその機能の最も敏感な指標(浮腫の有無と同様)です。つまり水分が身体の中に貯まり過ぎているかどうかということです。一番強調したいのは、既に述べたように、値そのものよりも増えたのか減ったのかの方がもっと大事なのです。心臓や腎臓に問題のある人や、食事が摂れていない可能性のある人はその都度体重測定をしないと病状の把握は出来ません。


急に体重が減った場合は、①エネルギーの供給が減った(経口摂取が減った、消化吸収が悪くなった、糖尿病の悪化で体内でのエネルギー利用が悪くなったなど)、②エネルギーの消費が増えた(発熱、運動し過ぎ、甲状腺機能亢進(ずっと運動しているのと同じ状態)、消耗性疾患(癌や肺結核やその他の炎症など))、③筋肉がひどく衰えるような状況などが考えられます。急に体重が増えた場合はその逆を推定します。結婚した男性と煙草を止めた人達もしばしば決まったように体重が増えますね、また、減っても増えても、その変化の前の方が異常で、元に戻ったということもあります。