2018年1月17日水曜日

021 高血圧管理はどうすればよいか (2003.03)

21. 高血圧管理はどうすればよいか  (2003.03)

多くの人は血圧が高いと血管が「プッチン」と破裂するイメージが強いように見受けます。一寸高いと慌てる方がおられます。血圧が高いと直ぐに「プッチン」なら、人間は既に絶滅しています。過酷なスポーツを続けてもそう簡単には「プッチン」しません。動脈硬化が強くなるから、血管の詰り(脳梗塞や心筋梗塞)や「プッチン」(脳出血)が生じやすくなるのです。新品のガス管と古いガス管をイメージすれば、分かりやすいと思います。加齢とともに動脈硬化が進むと、「プッチン」がなくても老人性痴呆の状態がじわじわ進むので、嫌な晩年になるリスクが増えます。だから、動脈硬化を人並み以下に抑えたいというのは、当たり前の欲求だと思います。なお、くも膜下出血の多くは動脈硬化と関係は少なく、血管異常によることが多いので、比較的若い人にも多いです。

以前は、医療機関での血圧データーしか測定できないので、「ある人の血圧とは医療機関の外来で測定した血圧」が定義でした。家や仕事場で血圧が高くても取り扱いの基準がありませんでした。実際は生活の中で血圧の高い程度が大きくその時間が長ければ(これは血圧と時間の積分ということです)、「ガス管が古くなるだろう」と思われます。しかし、科学的な臨床医療としては「理屈ではそのはずだが、そこまで言って良いのかな。なにせデーターがないし」という面が残ります。
 最近は自動血圧計による家庭血圧のデーターが判ってきて、やはり、家の血圧が高いと良くないことが確認されてきています。血圧変動も少ない人と多い人、夜に高い人や朝に高い人など、いろんなパターンの解析がなされつつあると思います。病院高血圧症の存在も判っています。外来より家庭や仕事場での生活時間がうんと多いので、家庭での血圧の方が大事ではないでしょうか。問題は仕事中です。データーを取りにくい。

 夜間に血圧が下がり過ぎると脳血流が悪くなるとか、逆に睡眠中の朝方に血圧の高くなる場合に、その時間帯に心筋梗塞や脳卒中が起こりやすいので注意という意見があります。診療ではそういう点に注意を払って、管理をしています。ただし、研究者や薬業者の我田引水の可能性を常に警戒しておかなくてはならないし、一般論的には付加因子が加われば全く逆の結論になることも無きにしも非ずです。

  ところで、「運動している最中は血圧を上げるのでしない方が良いか?」。個人的な考えとしては、「時々適当な血流増加や心拍数の増加という負担をかけておく方が血管も長持ちもするかも知れないし、出来かけた血栓も剥ぎ取って奇麗に掃除することになりそう」。データーは? なお、運動には運動後の降圧効果があることはよく知られています。


高齢なら血圧は高いのが当たり前という意見は、高齢なら脳梗塞が多いのは当たり前という意見と同じようなものとも言えます。 目標はなるだけそれを避けようということです。 ただ、動脈硬化によって既に脳血管などの通りが悪くなっている時は、血圧が低いと、その臓器の循環は不十分になる可能性があります。要するに、個々の人に対してはなかなか難しい話のようだと思います。昔、血圧は「年齢+90」というのがありましたが、そういう人が多いと言う程のことです。最近では年齢に関わらず130前後/80前後が大体の目安となっています。2000年の日本高血圧学会の血圧の目安は以下の通りです。正常血圧は130未満/85未満、正常高値は1301398589、軽症高血圧は1401599099、中等度高血圧は160179100109、重症高血圧は180以上/110以上(79号参照)。