2018年1月16日火曜日

001 薬はいつ飲めばよいのか (2000.10)

1. 薬はいつ飲めばよいのか  (2000.10)

飲む時期を指定する場合は食前・食後・食間・就寝前・一定時間間隔などがあり、その他に頓服(頓用)があります。頓服とは症状が出た時などに随時飲むことです。

飲む時期は何で決まるのかというと、理論上は「その薬の特性に合う時期を選ぶ」なのですが、案外に実際上で大事なのは「煩わしさなしに確実に飲む時期を選ぶ」ということです。この2つの目的のどちらをより優先するか、ということだと思います。その他に、薬の副作用としての胃腸障害の可能性がある場合には、食後服用を勧めることになりますが、これは薬次第でもあり個人差もあり、必ずしもそうすべきというのではないと思います。

糖尿病などは「食事の前に」飲むのがその特性からは普通でしょうが(絶対ではありません、あくまでも普通)、その他の多くの薬は薬の特性にかかわらず食後に飲むようにしているものが多いです。しかし例えば、朝食を7時、昼食を12時、夕食を19時に摂るとして、各食後に3回飲むとしますと、前回の服用は朝12時間前、昼5時間前、夕7時間前となって、かなりバラバラの間隔となります。もし朝食を9時などに摂れば、14時間前、3時間前、7時間前となってしまい、かなり問題ありのバラつきのように思われます。私が思うには、これは1日の中で規則的な生活リズムとして食事時間を利用しているのです。つまり、簡単に確実に服用するという点を優先しているのです。 薬の血中濃度に多少の(というより、相当大きい)日内変動があっても大概は支障がないのが実態であるということでしょう。   (注)最近の多くの糖尿病薬は以前のものと作用機序が異なり、食前服用でないものが多くなっています。

さて、最も一般的な「食後服用」の飲み方について。説明書には通常、「食後30分に飲みましょう」という指示が書いてあります。しかし、私は食後30分にきっちり飲むのは精神面への負担が大きすぎる(面倒くさすぎる)と思うとともに、しばしば飲み忘れの原因になると思います。仕事上などで無理な場合も多いと思います。私自身が服薬する時に、その実態が良く判ります。私は、むしろ「きっちり食後30分に服用できる方は、余程きっちりとした性格なのか、余程暇人なのかな」と、失礼ながら不審に思う程です。私は食後直ぐの服用の指示を通常は勧めています。

食後直ぐに服用する場合と空腹時に服用する場合との比較を述べますと、一般的に前者はより胃障害が少ないという一方で、薬の吸収がより遅く、かつ、より不十分という傾向にあります。ただし、ある種の薬は空腹時に服用する方が吸収の悪いことがあるとのことです。腸内に脂肪分のある方が吸収の良い薬剤があるそうです。➜(注)造血剤としてよく用いられる鉄剤(胃腸霜害の副作用がやや多い)は茶と一緒に服用すると吸収が阻害されて不可とする指導になっていると思いますが、これについても「程度の問題」だと思われるので、私は禁止していません。説明はしています。治療効果で判断すればよいことです。

いずれにしても、病態の差・合併症の有無・生活パターンの差・性格の差・副作用の出易さなどに個人差が大きく、気になることがあれば個別に担当医と協議相談する習慣を付けていただきたい。風邪薬を臨時服用したからといって、重要な慢性疾患の服用を自己判断で中止したけれど(不適切です)、結果オーライだったことも実は多いのです。