2018年1月17日水曜日

090 喘息と咳喘息(アレルギー性気管支炎)の最近の状況 (2016.07)

90. 喘息と咳喘息(アレルギー性気管支炎)の最近の状況  (2016.07)

喘息につては14年前(10号・11号参照)に書いています。現時点でも訂正することはあまりありません。既に、長期管理薬である吸入ステロイド(吸ス)と発作対応薬である吸入気管支拡張剤(メプチンエアーなど)の2者が中心になっていたということです。ただ、滅多に症状が出ない方は、症状が出る場合に早目にメプチンエアーで直ちに症状を抑えればそれで良いでしょう。1~2年に1回くらいメプチンエアーの補給に受診される方が散見されますが、それは望ましいことです。こういう状況の場合は、長期管理薬は不要と思われます。
その後は長時間作用性の気管支拡張剤の吸入剤や抗コリン吸入剤(主には肺気腫対応)が発売されましたが、前2者の吸入薬の登場と比較してインパクトは少ないと感じています。以下、咳喘息についてのコメントを追加しておきます。

咳喘息についても14年前(12号参照)に書いています。最近はこのような方の受診が毎日のようにあり、明らかに患者数が増えています。当院に最初に受診される方よりも他の医療機関で処方を受けた後の方が多いです。発症から1~2週間も経過していて、胸部写真で異常がなく、無熱の場合は、「臨床的に咳喘息である」と判断します。早く症状を緩和してほしいという当然の要望を尊重するために、副腎皮質ステロイド(副ス)内服を用いることが多いです。念のために、必要と思う採血検査も最初にしておきます。

半世紀前に比較して「スギ花粉症」が格段に増加し、アトピー性皮膚炎も増加していることも常識となっています。外界の空気の通り道である気管支(細気管支を含む)にアレルギーが格段に増えていることは当然念頭にないといけない。咳が1週間以上も続くのに、胸部写真などで(採血検査も参考)特定の病名が判らないなら、アレルギー性のものとの臨床診断を考えるべきでしょう。その場合でも、抗アレルギー剤と鎮咳剤や去痰剤を用いだけでは症状に改善のないことが多いのです。「副ス」だけが確実な症状の改善を期待することができます。2週間くらいかかってもよい場合は「吸ス」で治療を始めます。特に、妊娠中の場合は産科の先生と相談しなくてもよいように、そのようにしています。早期に改善したい場合は(これが大部分ですが)「副ス」内服薬を開始します。汎用の鎮咳剤(普通の咳止めや気管支拡張剤)を併用することもありますが、これらは実は強力な作用がないので、処方しなくても良いと思っています。「副ス」の内服薬を1~2週間くらい用いたら「今回は終わり」という場合もしばしばあり、「吸ス」を長期的に処方しないで済む場合が多いことは、患者さんにとって有り難いのではないかと思っています。15年以上も前に喘息専門医(金沢大学の藤村政樹先生)がちゃんと「咳が数週間も続く時には咳喘息を念頭にして、「副ス」内服薬(プレドニン20mgくらいから)を処方する」ことを書物にて推奨しています。なお、日本呼吸器学会から4年前に詳しい「咳嗽に関するガイドライン、第2版」が出ていますが、実地臨床的にはなかなか実用的とは言えない感じがします。


アレルギーかどうかにかかわらず、鼻炎の症状の「鼻水」「鼻づまり」「くしゃみ」は気管支炎に当てはめると、「痰」「息が重い~ゼーゼー」「咳」であります。つまり、この三つの症状は病因として分けて考える必要がありません。ただ、気管支の諸症状は、鼻や皮膚のアレルギーと比べて抗アレルギー剤の効果は悪いと小生は思います。また、気管支拡張剤(細気管支の拡張に有効)は典型的な喘息にはよく効いても、それ程細くない部分の気管支の症状である「咳」には効果があまり良くない。気管支拡張剤のエアロゾル吸入の刺激で咳が悪化する可能性があります。だから、咳喘息は「副ス」でないとなかなか早期に改善しないのです。「副ス」の吸入剤もエアロゾルよりもパウダーの方が刺激が少なくてベターと思います。