2018年1月17日水曜日

066 睡眠薬についての考え方 (2006.12)

66. 睡眠薬についての考え方  (2006.12)

神経内科の専門医が書いたものによりますと、「睡眠薬は過量でなければ不都合なことはあまりない」というものです。特に、不眠対策にアルコールを飲むよりも睡眠剤を使用する方を勧めるということです。これは多くの(全部ということではない)専門家による意見であろうと思います。しかし、それを踏まえた上でも、Aさんの場合はどうでBさんの場合はああだというのが、実地の臨床の場では大切だと思います。これは人生のあらゆる事柄に言えることではないでしょうか。以下に、思いついたままを述べてみます。

睡眠薬の服用をするかしないは基本的には自分が決めることです。その種類や量を含めて、医師が一緒になって考えさせていただくというものです。要するに、眠れないことが個々の人についてどのくらい苦痛で不都合かによって、睡眠薬を飲もうか飲まないかとなるのだろうと思います。眠れなかったら深夜テレビを楽しむのであれば、それで悪くないかも知れません。しかし、寝ている部屋が相部屋であればそういう訳にはいかない。また、次の日の昼間に仕事があれば寝不足は支障を来たすので、これもそういう訳にはいかない。眠らないこと自体がイライラする場合も、睡眠薬を飲んだ方が良いと私は思います。寝室が個室である友人が、寝室が相部屋の不眠症の人に「あんた、薬は飲まん方が良いよ」というのは、無責任な言葉だと思います。無責任な人は想像力不足です。

「降圧剤」の場合の質問と同じく、「睡眠剤を利用しだすと止められなくなるのが心配だ」という質問について。先ず、何故今、飲み始めようかと思うようになったかを考えると、種々の原因があるにせよ、高齢者の場合は、その大部分は高齢になってきたことと関係があることは容易に判ります。今後もどんどん年をとっていくので、今、服用が必要なら、数年後に不必要になる新たな事態が加わらない限り必要であろうと思いませんか?だから、薬を飲み始めたら、その結果、薬が止められなくなるということは本当ではありません。

実際に、途中から止めることはあります。不必要になる事態が加わった場合や、自分の気持ちが変わって「やっぱり、飲むのを止めようか」と思った時に、途中で止めますし、それで良いのです。時々は、そういうことを試してみるのはお勧めするものです。それで、その時々での薬の必要性を確かめればよいのではないでしょうか。「癖になるかどうか」についての質問であれば、確かに絶対にないと言えないことです。その理由が、心理的依存なのか薬理的機序なのかは別にしまして➜(注)認知症が社会的に問題となった最近では、高齢者には薬理的に不適切となる可能性のある従来からのもっとも一般的な睡眠剤(ベンゾジアゾペン系)以外の薬剤の使用を選択する傾向ということで、私も気を付けるようにしています。ただ、現実的には患者さん全員にそうしているということでもありません。


昼間にすることも少なく、身体的や精神的な活動をあまりしないのであれば、夜はそう眠たくないのかもしれませんね。老齢の場合に昼夜逆転している場合は心身の悪循環が深刻になる可能性があります。そういう場合の日中の長い睡眠は厄介です。ただ一般的には、一寸だけ午睡するというのは老若問わず良いことといわれています。➜(注)最近、私はひどい入眠障害で本当に困っています。寝床で必要があって本を読み始めると、直ぐに眠たくなって数ページも進まないうちに眠ってしまうので、(明かりは点いたままですが)これが良い対策かなと思います。しかし、最近はあまり読書をしなくなりました。テレビを付けながら眠ろうとすると熟睡できないことが多いです。ラジオや癒しの音楽を掛けながらの経験はありません。いずれもタイマーを利用すると良いかもしれません。そういうことで、そろそろ睡眠薬を試そうかと迷っています。