2018年1月17日水曜日

074 抜歯の時に抗凝固剤を止めておく必要はあるのか? (2007.11)

74. 抜歯の時に抗凝固剤を止めておく必要はあるのか?  (2007.11)

[質問] 最近、抗血液凝固を目的として、アスピリン錠を連続投与されている患者が多数見受けられます。このような患者の抜歯、小手術の前には、アスピリンの服用を中止したほうがよいのでしょうか。また、中止しなくとも通常の止血法で大丈夫なのでしょうか。
柏原市、歯科)
   [回答] ご質問のアスピリン投与中の抜歯や小手術の問題ですが、多少出血が増えるのは確かです。ただし、抜歯や小手術後の圧迫などによる通常の止血で十分であろうと思われます。一旦止血すれば、それで充分で、ワーファリン(抗凝固薬)投与時のように手術終了後、数時間してから大出血がはじまることはないはずです。
どうしても出血が気になるときには、アスピリンの長い作用からみて、抜歯や小手術の4~5日前にアスピリンを中止せざるを得ないと思われます。おそらく、それでも大したことは起こらないと思いますが、アスピリン中止により血栓発現の危険が増大するので、このことをどう考えるかが問題です。また、アスピリンを作用時間の短い抗血小板薬(たとえばプロサイリン)やトレンタール)、プレタール)など)にあらかじめ切り替えておいて、止血後アスピリンを再開するのも一つの方法です。
金沢大学内科教授 松田 保

上記はインターネットから一部を引用したものです。ついでに ワーファリン錠投与中の患者の抜歯の場合について書いておきます。
ワーファリン投与中については、通常のワーファリン管理状況程度では抜歯の際にワーファリンを中止する必要は、私の読んだ文献からは、ないように思われます。ワーファリン管理における目標は、大体INR=1.6~2.6という検査値の範囲である場合が多いのですが、抜歯の場合のINRの推奨値は<2.5であるらしいので、敢えて中止する方が良いというものではないと思います。その時点のINR値を確認しておくのは必要だと思います。歯科医の先生から一時中止して欲しいと連絡がある場合は、止むを得ずに4~5日程度の期間ワーファリンを中止することが少なくないです。
しかし、内科的にはワーファリン服用が望ましいということで処方されていますので、安易に自動的に中止の依頼に応じるのも悩ましいことです。内科医の方から一時中止を勧めるものではないことを書いておきます。アスピリン(抗血小板剤)の場合に「私は止めて頂かなくても結構です」とされる歯科医が次第に増えており,有り難いと思います。心臓の機械弁置換術を受けている患者さんなどは極力、ワーファリンの服用を中止することは避けたいものだと思います。
ただし、胃腸の内視鏡で生検するような場合は、処置後の万が一の出血はチェックするのは難しいので(歯科治療の場合は容易)、仕方なく、ワーファリンやアスピリンなどの薬剤は一時中止するのが一般的であると思います。

 なお、アスピリンは風邪や頭痛の時に服用する薬剤と同じものですが、これは「抗血小板作用」によって、血液凝固を抑制する薬です。ワーファリンは血漿中の凝固因子を抑制するという「抗凝固作用」によって、血液凝固を抑制する薬です(6号参照)。

 ➜(注)こういう薬剤を投与する疾患は、現在では心房細動という不整脈が最も多いように思います。心臓内で生じた凝血塊が血流に乗っていって、脳塞栓症を引き起こすリスクが問題だからです。以前は、アスピリン剤が使われていましたが、最近ではワーファリンによる管理の方が基本になっています。エコノミークラス症候群にも用いられます。
 最近、別の機序の抗凝固剤の新薬が数種類出回っており、便利な点も多いのですが、薬価が高いのが問題です。ワーファリンはとにかく安い。