2018年1月17日水曜日

005 検診・人間ドックで何が判って、何が判らないか (2001.01)

  5. 検診・人間ドックで何が判って、何が判らないか  (2001.01) 

住民検診には、基本健康診査・胸部検診・胃癌検診・腹部エコー・婦人科検診・乳癌検診などがあります。まず、基本健康診査ですが、一般診察に加えて主に採血検査で判断する内容のものです(採血検査は選んだ検査項目しか判りません。採血検査で何でも判ると思っている方がおられるので、念のため)。検査項目は経済面も考慮して決められています。この「基本健康診査」の指定検査項目からは、癌以外の成人病(生活習慣病)についての判断ができるので、便利です。

「癌検診」はほとんどが画像診断で判断するということをしっかり知って頂きたいと思います。腫瘍マーカーといって血液や尿で判断する場合もありますが、例外的なものは別として、一般の成人の癌の早期診断ではあまり役には立ちません。つまり、肺癌なら胸部写真や胸部CT、食道胃十二指腸なら胃カメラ(透視もありますが)、大腸も大腸カメラ(透視もありますが)、肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓などは腹部エコーや腹部CTで判断します。その他、甲状腺・乳腺も視診・触診のうえで怪しいのはやはり画像診断です。子宮癌検診の場合、子宮頚部癌は直接見えるところにあり、観察で怪しい場合は検診にて細胞診も行われます。なお、「癌の確定診断」は画像診断ではなく生検材料からの「病理診断」(または、少なくとも「細胞診」)です。ただ現実的には、画像だけでも「確定的な」判断が可能な場合もあります。

胃透視も多少そうですが、肺癌検診において「胸部写真で肺癌の疑いでひっかかっても、精密検査の結果では癌ではなかったということは非常に多い。私が委嘱されている熊本県の胸部検診事業では二人の経験のある認定読影医が個々に診断して、その上で当該医師と違う第三の判定医師の総合判断で判定して、受診者に結果を通知します。それでも確定ではないので、ある程度怪しい陰影は「要精査」として引っ掛けます。そうしないと、見落としがでてくるからです。胸部写真の読影は実は非常に難しいです(胸部CTの方が読影し易い)。肺の専門医がいない病院の人間ドックや職場検診を受けて肺は大丈夫と言われたといって、診察上必要と思われる胸部写真を受けたくないという方がいます。ある程度は説得しますが、無理に検査することはできないので、こちらは困ります。本当は、ご本人が困ることがあるということです。

「人間ドック」は基本健康診査よりも採血項目がより充実して、各種癌にたいする検査を複数メニューに加えたというものです。やはり選んだ項目によって判るものが決まります。各ドック機関による項目のメニューが多少異なります。


人間ドックにせよ検診にせよ、あくまでも「一応健康だろうが、どこか悪いところがあるかもしれない」と考えて行う検査です。ある病気で医療機関にかかっている場合は、当該疾患に関することは当然診療の方の判断を優先するべきです。私は経済面を考え、検診やドックの結果データーを参考にしてなるだけ重なる検査は省略する努力をしています。しかし、採血項目も個々の方において治療上必要な項目がドックや検診では抜けていることがあります。また、胸部写真などの話ですが、たとえ1ヶ月前に検診で「異常なし」でも、数日以内に異常陰影が出現することは稀ではありません(特に肺炎や心不全などでは変化が速い)。症状がある場合は最近の検診の結果に拘っては間違いの元です。胸部写真は必要であれば1日に数枚撮影しても全く心配ありません。妊娠中の人でも「本当は問題なし」です。(このテーマは94号でも書いています)