2018年1月17日水曜日

083 当院に品揃えしてある薬剤の現状から判ること (2016.06)

83. 当院に品揃えしてある薬剤の現状から判ること  (2016.06)

前号の記事を書いていて、本稿を書こうと思いました。ずいぶん以前に調剤薬局を利用することを考えました。しかし、同一敷地内には出店できないという規制を作られたために出来ませんでした。少し離れた所では、雨の時に老人が困ると思いました。

現在の疾患領域別の内服薬在庫の現状は次の通りです。①抗菌剤17種、②抗炎症剤16種(抗アレルギー剤を含む)、③呼吸器薬6種、④循環器薬57種、⑤消化器薬42種、⑥向精神薬31種、⑦代謝疾患薬32種、⑧ミネラル・ビタミン剤14種、⑨泌尿器薬5種、⑩麻薬6種、⑪漢方薬5種、などです。内服以外は次の通りです。坐薬6種、吸入薬8種、点鼻点眼薬など10種、皮膚塗布薬14種、湿布薬10種、注射薬はここには書きません。内服薬は230余種類も納入しています。「結構多いなあ」と、ため息が出ます。

私が一番目立つと思うことは、③の呼吸器薬が極端に少ないことです。私は長年、呼吸器外科➜呼吸器内科を主標榜しているにも拘わらずです。炎症疾患の多い呼吸器領域は①抗菌剤と②抗炎症剤が主力の薬剤なのです。つまり、主に鎮咳・去痰・呼吸改善などの呼吸器関係の「対症薬」が極端に少ない。実はこういう薬は役に立っているかどうか検証が難しい。肺炎の症状は根本の炎症を抑えるのが一番強力な対症療法です。喘息関連疾患も炎症を確実に抑える副腎皮質ステロイド投与が一番強力な対症療法であるのです。抗アレルギー剤に関しては、随分以前から喘息には通常の抗アレルギー剤よりも抗ロイコトリエン剤というのが学問的に良いはずだとの製薬会社の情報や専門医の推奨などがあり、他の医療機関ではしばしば用いられています。小生も以前から処方を試みていますが、高額薬のくせに効果がある感触はあまりなかったのです。この薬剤は、現在では、微妙な判断をしている5人の患者さんに処方をしているだけです。

「鎮咳剤」は「咳が軽くなるかも知れない薬」であって「咳が止まる薬」とは限りません。「去痰剤」も痰が切れるとは限りません。そもそも去痰剤というのは蛋白分解の酵素剤という蛋白質のはずで、こんなものを服用しても血液に入る前に胃腸で分解されてアミノ酸になってしまうはずなのに何で効くのだ! 異質の蛋白質がもし分解されずに血液に吸収されるとアレルギー反応がおこることが危惧されます。サプリメントのコラーゲン服用も同じく馬鹿な話だと思いますが、自費で買っているので、この場合は「阿呆だなあ、しかし、景気対策に貢献しているのかな」と傍観して済む話です。

他方、普通によく用いられる抗炎症剤(NSAID)は解熱や鎮痛に確実な効果があります。抗アレルギー薬も目・鼻・皮膚の症状に効果が期待できます。また、抗菌剤と副腎皮質ステロイド剤は適用が間違っていなかったら、最も根本から状態をよくし得る薬剤で、医学の歴史を俯瞰しても重要な双璧の薬であろうかと思います。廉い薬の入手が容易です。


漢方薬は全て否定するものではありませんが、かなりの部分は「逃げの処方」「患者を納得させるための処方」として、莫大な医療費の無駄使いを行っているように思います。漢方薬であってもなかっても、対症薬であるのならば1カ月程度使っても効果がはっきりしない薬の処方は中止すべきだと私は思います。漢方薬は元来、主に病名でなく症状に対して処方するはずです。小生は以前5~6年以上、咽喉症状に好んで「半夏厚朴湯」を処方しましたが、その後次第に最初に思ったほどには効かないような感触を得て止めました。風邪症候群に「葛根湯」というのは薬局での話にしてほしいと思うものですが、他医でしばしば処方されています。