2018年1月17日水曜日

019 歩行 (ウオーキング) についての雑記 (2002.10)

19. 歩行 (ウオーキング) についての雑記  (2002.10)

良い姿勢で歩行することは健康対策ないし老化防止の基本です。筋力は適度の運動(適度の負荷をかける)をすると、維持ないし多少の強化を得られますが、過度の運動は筋肉や関節を障害するし、運動しなさ過ぎると筋力は低下するという3原則は有名です。私達若くない者は、内在的な老化によりただでさえ筋肉も衰えてきますが、身体活動が減ってきますので3原則の点からもどんどん筋力が低下してきます。

人間の体はしばしば悪循環と良循環という成り行きが非常に重要です(96号参照)。筋力が落ちると今まで出来ていた運動が、疲れ易くなったり筋肉や関節が痛くなったりして出来なくなり、ますます筋力低下になります。もうひとつは姿勢のことです。姿勢と筋力とは表裏一体です。良い姿勢はバランスのよい筋力の裏打ちがあります。筋力が落ちると姿勢が悪くなり、姿勢が悪くなると筋肉が疲れやすくなります。ともに悪循環であり、どこかで断ち切らないと機能低下と老化が進み、常に疲れやすいとか関節が痛いとかで、やりたい活動も控えざるを得なくなり、生活も面白くなくなってきます。

どうせ歩行をするのなら、気候の良い時に景色の悪くないところで清々しい気持ちでしたいものです。しかし、敢えて異議のようなことを言いますと、歩行は良い生活をするための保険ですから、初めから快適にというのは認識不足ではないでしょうか。「夏は暑いから散歩しなかった」とかの話が多い。最近、私は気付いて「家の中ですればいいのではないですか」とよく勧めています。積極的に負荷をかけようとする場合は、壁に両手をついて足踏みをすればよろしいです。体の壁に預ける角度・膝を持ち上げる角度・リズムの速さの3点で自分にふさわしいと思う筋肉への負荷が調節できます。このことは当院入院中の患者さんに対する[歩行器]による筋力リハビリの成果の上に立っています。テレビを見ながら、「このCMが終わるまで続けよう」とやると心理的にも容易でしょう。道具が要りません、
こうした認識と強い心構えの上で、次に気分良く散歩する算段を考えるとよいと思います。やはり、天候の良い時に良い環境で歩きたいものです。歩かない日は体調がスッキリしないとなってくるとしめたものです。大事なことは、なるだけ良い姿勢を心掛けることです。悪い姿勢での運動は悪循環を固定するという良くない点も考えられます。

「有酸素運動を30分とか1時間とかしないダメ」というのは無視しましょう。あれは体内の余剰脂肪を燃やすという意味です(最近は、15分でも意味があるという意見があります)。糖代謝や脂質代謝の改善の目的の際の生活改善プランの話です。筋肉機能維持の点からは10分だけの運動でもゼロと比べると実に結構なことです。疲れたらその都度止めて、またすれば良い。家の中での運動は「すぐに出来てすぐに止められる」ので優れています。

仕事が実質的に十分な運動になっている方はこの忙しいのにわざわざ時間を取って散歩などする必要はありません。しかし、仕事を疲れる程やっているというのは運動になっているかどうか判りません。デパートの売り場で丸1日「立ち仕事」をすると、非常に疲労感があるでしょうが、運動という点では余りやっていません。むしろ、帰宅してから僅かに10分でも歩行かランニングするのが疲労感を取り去るのにしばしば有効です。


膝が痛い人は側面に補強線の入った装具をはめて歩行すると、案外早く悪循環から良循環に転換してくるかも知れません。ドラッグストア・ホームセンター・通販でも入手できます。医療機関で扱うものもあります。肥満の方はカロリー制限が重要です。