2018年1月17日水曜日

059 知人に対しても、医療アドバイスは診察なしでは難しい (2006.07)

59. 知人に対しても、医療アドバイスは診察なしでは難しい  (2006.07)

昔から親しい遠方の友人から「僕の親父が○○病院に入院したけど、主治医がどうも頼りないから心配や」というような電話相談が時々ありました。友人の話からは病状の説明も不十分で不適切に思っているようです。
  私は、いくら友人から父親の病状を聞いても、自分でどうこうすることの判断(診断)は出来ません。難しいからです。イレウスとだけでは状況が不明だし、肺癌という病名だけでは方針は判らない。やはり、その時点で診療している主治医が一番データーを持っているのです。普通に求めてもちゃんと病状の説明をしてくれないなら問題外ですが、友人の方もちゃんと先入観なしに説明を聞く機会を得ているのかが知りたいところです。
友人は誰かのアドバイスでその中小病院に入院させたが、どうものっけから病院を疑いながら任せているようです。その気持ちも判らないではないが、これがいけないと思います。本当は悪くない病院かも知れないのに、のっけから信頼を持たない気持ちで病院に連れていくことは「失礼」だと」思いますし、主治医もそれを感じて、よそよそしくなる可能性があります。以心伝心だから、これはあると思います。こういうことで歯車が合わなくなります。
しかし、信頼できない状態になったのなら、早く転院した方が良い。患者側にとって嫌な状況だけではなく、医療側にとっても嫌な状況なのです。こういう場合に、不都合なことが起こりやすいのです。「一度は今の病名や病状と見通しをきっちり聞くこと。それで納得しなかったら他院に転医すること。その場合でも紹介状を書いてもらうこと」と。とにかく、一度はちゃんとした面談(低姿勢でも高姿勢でもなく)をする姿勢が患者サイドに求められます。最近では、医療制度として、入院時に「入院診療計画書」という書類を医療機関が発行するようになり、患者さんや家族が状態や方針を把握する機会が多少得られやすい。

兄が「急に大量の血尿が出た」との電話をしてきたことがありました。兄は距離的に便利な地域の中小の私立病院に行くことに決めました。私は基幹病院的な方が良いのではないかとも思いましたが、反対しませんでした。経過を聞いて、またアドバイスをすれば良いと思ったからです。もし、診断がなかなか付かなかったり、ガンなどの重病であると判れば、その病院の先生にその時点で「診療を○○病院で受けるのはどうですか」と普通に言えば、相談の上で紹介状を書いてくれるからです。兄のこの場合は、諸検査の結果、原因不明の一過性の血尿だったようで、その病院で終わったので、結果的に正解でした。

外来で、かかりつけ医または主治医として診療させて頂いている経過中に、今の治療に不都合をきたすようなことを近所の人からアドバイスされて、主治医の「知らない間に」行動していたという話は枚挙にいとまがありません。具体的には、別の医者にかかること、こういう検査を受けてみること、自分の愛用している薬やサプリメントを勧めること、などです。「知らない間に」というのが重要です。「先に聞いても、どうせこの先生は反対する感じだから、知らない間に」というのは理解は出来ますが、やはり適切ではない。気が動く話なら、気軽に主治医に意見を聞くのが良いと思います。主治医のアドバイスと反対のことをするのなら、一旦は主治医を変更するのが筋だと思います。
「いやいや、先生を信頼していないのではないのです。友人のサプリメントの話には気持ちが動いたので」という話も多い。別の医者にかかるというのも、今の治療に不信があるのなら仕方がないが、実は本人にはそんなに不満はないのに、押し売りみたいに「あの先生に診てもらいなさいよ」となる。たまに正解となることがあるのは事実。

ただ上記のように、医師であっても、直接診察しないと責任あるアドバイスは出来ないことが多いので、知人の無責任とも思われるアドバイスは問題をはらんでいます。