2018年1月17日水曜日

060 テレビの健康や病気の番組は危険な場合がある (2006.07)

60. テレビの健康や病気の番組は危険な場合がある  (2006.07)

私は、サプリメントや健康食品について警告するようなことを本シリーズでしばしば書いていますが、自分の医療経営の邪魔になるからというけち臭い理由ではありません。とりわけ重要だと思うことを3つ書いておきたいと思います。①ある状態の人には「薬」になりえても、別の状態の人には「毒」になることがある、②その「薬」になるはずの効果は「ものすごく不確か」なくせに、「毒」になる場合は「明確に出る」ことがある、③どの人にも「薬」だと思わせるのは、それだけでインチキ臭い。どの人にも「薬」なのは水・空気・適切な食事(医食同源)であって、水や食事でさえも状況により「毒」になり得る。ビタミン剤でさえ摂取し過ぎると「毒」になり得る。脂溶性のA、D、Eなどは特に要注意。(ここで言う「薬」は良い効果、「毒」は悪い効果という程の意味)
サプリメントなど以外でも、筋肉や関節のトレーニング、食事のメニューや食事の仕方、子供の育て方、老後の過ごし方など、万人に適切なメニューはそんなにありません。筋トレについても、普通の時と、怪我をした直後と、怪我の後の少し経過した時では異なります。食事でも、腎不全のAさんはたんぱく質を制限しながら糖分と脂肪でかなりのカロリーをまかなうが、糖尿病のBさんや超肥満のCさんは糖分と脂肪は特に気を付けましょうということになります。腎不全と糖尿病の合併の場合はなかなか難しい。

糖尿病や超肥満の人には、しばしば無視できない量のカロリーを含む訳の判らない栄養食品や、あるいは普通の食材であっても、多く摂るのは百害ありの場合がしばしばです。はっきりとした糖尿病は、「何とか茶」のようなもので管理できるような甘い話ではありません。大企業も無責任なキャッチフレースで販売し、役所も特定保健用食品という業界ベッタリの?無責任な?制度を作っている。誰か、天下りの実態を調べてください。
 ワーファリンという抗凝固剤の服用中は、納豆のみならずクロレラ(これらは一般的にはむしろ好ましい場合が多い)は少量でも禁忌です。糖尿病の人が、バナナは良いと思って(TVで勧めていた)、いつもの食事とは別に毎日バナナを食べて高血糖になっていた。赤ワインや蜂蜜、黒砂糖・黒酢(甘味を付けないと飲みにくい)も然り(TVです)。

個別的な注意事を無視して不特定多数に勧めるのは、即ちいい加減なのです。これを大量に垂れ流しているのがTVです。「○○もんた」司会の長寿番組は特にひどい。長らく高視聴率を維持しているのでその悪影響が飛びぬけて大きい。民放におけるこの種の番組の劣悪さを思うと、NHKの存在意義はそれなりにあると思う。いかさま健康番組を見た批判能力の欠如している人たちは、疑うこともなくその番組で勧める物や事に突き進んでしまう。しかし、自分の身体の医学的な位置づけが判らない人には危険です。(暇つぶしの話としてだけ聞いておれば、かなり面白けれども)こういう問題点は先刻承知のはずなのに、悪質番組を自主規制しない民間放送局の社会的責任感覚は麻痺している。マスコミは事件が起こると企業の責任者や政治家の非を舌鋒鋭く攻め立てるくせに、自分には大甘であります。マスコミがしばしば他者に強いるような自己改革や自己規制のようなことは実は「生理的」に困難なもので、「言うは易し、行うは難し」なのです。


TV業界とともに問題なのは、たまに小さな怪しい健康食品会社を薬事法違反で検挙してお茶を濁し、もっと悪影響をばら撒いている悪質番組を放置している行政・政治の無力であります。マスコミは必要でポジティブな面はあったのだが、今や怪獣化してコントロール不能になってしまっているように思えます。こういう状況については、多くの国民に責任があると思います、「ここまで来たら、もうどうしようもない」と諦めの心境です。