2018年1月17日水曜日

051 カロリー制限が難しいのは本能と洗脳による? (2005.05)

51. カロリー制限が難しいのは本能と洗脳による?  (2005.05)

「体重を減らすためにこれから運動するようにします」と言う人が多いのは何故か? カロリー制限を行うことが実際には困難極まるので、論理的な逃げを打っている場合も少なくないと思われます。もちろん、筋肉を付けながら皮下脂肪を燃焼するには適切な運動が素晴らしいことは確かです。しかし、たとえこういう高いレベルでの話を知っておられても、単に逃げを打つために話だけ持ち出していることが多い。また、実際に運動を積極的に実行しだしても、かえってカロリーの増加が過大になることがあります。一番素晴らしいのは、自己管理の意識が高くなり、運動もちゃんとしながらカロリー管理も怠らないということですが、実際にこういうパターンにうまくもっていく方達も見受けられ、そういう場合はこちらも脱帽することになります。

日本糖尿病学会監修のカロリー指導では、デスクワーク程度の軽度労働者の場合の摂取カロリーは標準体重x30カロリー強が目安になっている。年齢と男女の差によって多少違います(表があって簡単に判るようになっています)。この場合、標準体重が60キロであれば摂取カロリーは1800カロリー強となります。これは食事や間食やサプリメントなど口に入るもの全ての総量規制の量です。このカロリー量を日常生活の中で守ることは結構強い自制心が必要だと思います。強力な食欲というのが邪魔をするからです。
それでは、日本人一般のカロリー指導はどうであるかといいますと、厚労省ホームページに「日本人の食事摂取基準(2005年版)」について書かれてあります。例えば、非活動的な50歳以上70歳未満の女性の場合の推定エネルギー必要量は約1600Calで、きっちりとしたカロリー制限は糖尿病患者だけの他人事ではないということです。同じ条件の男性の場合は2000calです。多くの方は摂取過剰ではないでしょうか。生理活動の落ちた中年以降になって、若い頃と似たり寄ったりのカロリーや栄養を取り続けていると肥満や成人病的な代謝異常が出現しやすくなるでしょう。
私は、食欲の他に、何カロリーが必要であるという医学的常識が曲者であると思います。腸管からの吸収に個人差もあるし、基礎代謝量の個人差もある。うんと少ないカロリーでも結果的に不都合がなければ良いはずです。端的に言って、痩せてきたらカロリー不足を疑い、肥満のままであれば結果的にカロリー過多なのです。これに関しては「成果主義」であるべきです。

糖尿病と肥満の場合は、カロリー制限を最優先にするべきだと思われます。高齢者も栄養状態が悪いとかの特別の場合を除き、それに準じた考えが適切であると思います。このような糖尿病・肥満・その余地のある高齢者が、やれ牛乳が良いとかヨーグルトが良いとか、蜂蜜とか、カロリーや余計な栄養素が無視できないような代物が良いとか言うのは、商売上手な連中に踊らされて自分を失っているように思われます。極端に言えば、牛乳などは普通の中年や高齢者には無縁のものと思う方が間違いが少ない。
現在の日本では、通常の人々において栄養不良が問題ではなく、栄養過多が問題なのです。鉄欠乏性貧血であれば、レバーを食べるのでなく、単純に鉄剤を服用するほうが体に良い、かつ廉い。しかも即効かつ著効がある。カルシウムが本当に不足しているのなら、牛乳でなく、カルシウム剤の服用が明快である。牛乳の味が好きであれば別ですが。なお、食材の中でも、大根の葉や小松菜などの野菜の葉っぱには牛乳に負けない量のカルシウムが含まれるので、此方がより素晴しいのでしょう(吸収率はどうなのでしょう)。

食事は栄養など難しく考えずに、なるだけ品数を確保した和風家庭料理的なものの中で、単に美味しいと思うものを選ぶのが良いと思います。