2018年1月17日水曜日

025 胸が苦しかったので「救心」を服用した (2003.04)

25. 胸が苦しかったので「救心」を服用した  (2003.04)

いろんな心臓の症状で「救心を服用したがそれでよかったか?」という質問をよく受けます。心臓の症状のような潜在的に命に関わる可能性のある症状に対して、医師の診断を受けないで服用できる薬とは何なんだろうとは思いませんか? 私は直ぐにそう思います。しかもこの薬は少なくとも半世紀以上市場に出回っていて、ニュースになるような不都合な事故は起こっていないと思います。特に循環器の薬品は適用を誤る(病名と使用薬品が不一致である)と重大な薬理的な不都合が生じる可能性があります。ということは大きい薬理作用はないということでしょう。救心の成分を知らなかっても、状況を考えればそう言う結論になるように思います。

今から思い出すと、45年程前に狭心症(の疑い)の母親が「救心」を愛用していました。実物は子供の頃に見て知っていました。今回、説明書と実物を見るために「救心」を買ってみました。30粒で1890円でした。効能には「動悸・息切れ・気付け」しか書いていません。狭心症の疑いの症状などは効能にはありませんでした。しかもニトロペンという狭心症に対する頓服薬のように舌下錠(直ぐに血液に吸収される)ではなくて、水や湯で胃に飲み込むのですから、狭心症かもしれないとして服用する場合は、暢気過ぎる飲み方です。効能にある動悸・息切れ・気付けの改善ということは、基本的には、自律神経の状態の安定化をさせるということでしょう。ただ、心臓の機能に直接大きい影響を及ぼすものではあるはずがありません。作用が大きくないから大丈夫なのでしょう。
成分を読みました。8種類の動植物の生薬成分が含まれています。漢方薬のようなものでしょう。大人の一回の使用量は2粒とありますが、物凄く小さい。直径約2.5mmの球です。2粒の中には8種類もの生薬が含まれていて、総計20mg弱しか含まれていないのですから、生薬の割にはその各成分は非常に僅かな量と思われます。ただし、現実的に効能に書かれているような症状には効果がある場合があるのでしょう。

比較の参考に、市場に出回っている多くの漢方薬の一回分は2500mgです。エキスの精製度がかなり違うかも知れないので、あくまでも参考です。この漢方薬の服用量もかなり少な目に設定してあることは、その筋では知られています。何故かと言いますと、漢方薬も現実には適用が曖昧なうえ、薬局でも買えますし、医師が処方する場合でも訳の判らない点がないとは言えませんし、不都合な薬理作用を恐れてかなり少な目に設定しています(➜84号参照)。それで、ただでさえ少量なのに食後に服用すると吸収率が悪いので、漢方の多くは食間とか食前とかになっているとのことです。薬理的にはいつ服用しても良いのですが、そういう事を医師や薬剤師の方も知らない人が多いのではないかと思います。胃に悪かったら食後でも構わないのです。実際に、「漢方薬を指示通りの食間に飲むと胃の調子が悪くて困る」という方がおられます。


それはそうと、よく「風邪を引いて薬局の薬を買って飲んだが効かないので受診した」という場合に、「薬局の薬は上等でない」と思い込んでいる人が多いようです。私は薬局の薬の名誉のために言いますが、対症薬としては病院の薬と同じような成分です(➜73号参照)。普通の対症療法として薬局の薬を利用されるのは便利で良いことだと思います。医療費への公的支出の負担もなく、そういう意味でも良いことだと思います。何が違うかと言いますと、使用量を少な目に設定しているようです。既に述べましたように、薬局で買う薬は副作用などの不都合な作用をより厳しく避けようとしているからでしょう。何しろ医師の診察を受けずに入手するからそうなるのでしょう。