2018年1月17日水曜日

016 にせ医者診療とリウマチ薬の訪問販売に思うこと (2002.09)

16. にせ医者診療とリウマチ薬の訪問販売に思うこと  (2002.09)

忘れた頃に「にせ医者」による診療被害の報道があります。「にせ医者」の中には戦争中に衛生兵であったり、或いは医学の勉強をしていたが医師国家試験に合格しなかった人などが結構いるようです。ところが、患者さんに対する応対も親切で、評判も良かった場合が結構あるようです。それまで掛かっていた患者さんの多くは、今まで受けた診療内容が不都合ではなかったか大いに気になります。
ここで思うのですが、診療内容の多くは不都合があまりなかったかも知れません。確実に悪いのは違法行為をして、「本当の医者」と思っていた患者さんの信頼を裏切ったことです。運の良い患者さんにおいては、結果的にその間、話も良く聞いてくれて、周りの「本当の医者」に劣らない診療を受けていたかも知れません。 実際の診療内容のでたらめがあったかどうかはケースバイケースでしょう。ちゃんと免許のある医師も、人格が変であったり、判断力に欠陥があったりの場合もないともいえません。

リウマチ薬の訪問販売で薬事法違反にて当局の取締りを受けたという報道も時々見られます。こちらの方の実行者は恐らく完全に商売でやっていると私は思います。最近の「やせ薬」(15号参照)の場合と同じですが、正規の医療のルートを通さない薬物を服用することを大丈夫と思うことが大変不思議です。
しかし考えて見ますと、そういうのに頼ろうとする程、現代医学が多くのリウマチ患者さんの苦痛を解決出来ていない裏返しでもあります。基本的に難治性のリウマチの治療はいまだに専門家でもやはり難しい。重症のアトピー性皮膚炎の場合もよく似た状況と思われます。現場の医師の側は治療が難しいというのを知っているので、患者さんの苦みを解消しようという意気込みを失くしている、それを患者さんが感じているのかも知れません。

訪問販売のリウマチ薬には副腎皮質ステロイド(「副ス」)と言う強力な抗炎症剤が含まれているので、直ぐに痛みや腫れが引いてよく効くのです。しかし、続けているうちにその副作用で顔がむくんできて騒ぎになり、当局の知るところになるのです。ここで述べておきたいのは、リウマチに対する正規の医療でも、強い痛みなどには適宜その「副ス」を少量もしくは短期間併用することが勧められているのです。多くの医師は案外それを使ってあげないのが問題と思います(医師の多くに「副ス」についての適切な哲学がなく、素人と同程度の考えしかないのではないか?)。
実際、リウマチ疾患の指導的医師は教科書的にはいかにも「副ス」はなるだけ避けるようにしたいと受け取られるような記載をしていますが、自らは数10%の患者さんに持続的投与をしているのが現状です。こういう「無難な嘘」のような記載が横行しているように思われます。ただ、「副ス」は使い出すと途中で止めると症状がぶり返すので、離脱が難しいのです。ある程度量の「副ス」長期間の投与では、当然ながら副作用による不都合方が気になります。しかし、苦痛が強い場合は続行することは止むを得なく、それで指導的医師も数10%の患者さんに用いているということになります。

訪問販売では基本的に商売でやっていますので、そういう説明もなく顔がむくんでから大騒ぎになるのです。ここで被害者の側を考えますと、違法行為に乗ったという自らが蒔いた種であることですし、症状が改善したという良いこともあったのですから、被害者という面ばかりを主張するのも嫌だなあと感じます。なお、顔のむくみ自体は大した副作用でなく、むしろ「続けていると本当に困った副作用が出ることがあるかも知れない」という注意信号程度であり、薬を減らすと元に戻るものです。