2018年1月17日水曜日

049 コエンザイムQ10について入手した情報 (2005.03)

49. コエンザイムQ10について入手した情報  (2005.03)

どこかで聞いたことがある「コエンザイムQ10」が、最近は健康食品やサプリメント業界で人気が急上昇して、一般の関心を引いているようです。旅行中に飛行機内で読んだ産経新聞(昨年1128日)に「コQ」についての記事がありました。それによると、「今年9月にテレビで取り上げられたことでサプリメント関連業界でブームに火が付き、101日には厚労省から化粧品への使用が認可されて、さらに商品の増加となった」。このテレビというのは「ものもんた」であると推測しています。

大塚製薬から毎月送られてくる「大塚薬報」(昨年11月号)の「ビタミン・テキスト」というシリーズものに、この「コQ」の解説がありました。米国の解説書の翻訳文です。話のネタに書きますが、「細胞のミトコンドリアの電子伝導系に介在して、酸化還元に補酵素(コエンザイムは補酵素の和訳)として働き、抗酸化作用がある」とのことです。キノン(Quinone)という構造に10個の側鎖が付いているので、そういう名前になっている。「コQ」は1957年に発見され、この物質の機能の研究によって1978年にノーベル化学賞が授与されているので、学問的にはそれなりのものです。ただし、医学生理学賞ではありません。

今年120日付けの「メディカルトリビューン」という新聞にも記事がでました。タイトルは「抗酸化サプリメントの安易な使用に警鐘」。これによると、「コQ」は脂溶性のビタミンE様物質(抗酸化作用物質)として期待してサプリメントなどに添加して商品化しているようです。「コQ」自体は厚労省が認可した特定保健用食品でも栄養機能食品でもなく、またその両者に必須の物質でもありません(この保健用食品や栄養機能食品というものも極めて怪しい存在であります)。この記事は久留米大学第3内科の松岡助教授らの米国心臓学会(AHA)での発表内容を取材したものですが、検索した数種類の指標からすると「コQ」の投与は治療上無意味であるという内容です。なお、この記事にはAHAのガイドライン(2003年)も紹介されており、「医師は心血管疾患のリスクを軽減するためとして、閉経後のホルモン補充療法やガーリック投与と同様、ビタミンC、ビタミンE、「コQ」のサプリメントを勧めるべきではない(有効性が証明できず、有害な可能性もあるから)」と明確に書かれてあります。この松岡先生は、真面目な外来診療をする上でのライバルは「みのもんた」と述べていますが、ライバルという言葉は大いに遠慮した言葉であって、本当はもっと辛辣な言い方をしたいのだと私は感じました。


厚労省が今年34日付けで、「イデベノンを含有していた「コQ」含有健康食品として販売されていた無承認無許可医薬品の発見について」という発表をしています。「コQ」の代わりにイデベノンという物質が入っていたので、摘発したそうです。イデベノンという物質は昭和61年に武田製薬から脳卒中後遺症改善剤として販売承認された「アバン」という結構売り上げの多かった薬の成分です。ところが、平成10年に有効性に疑問があり承認が取り消された薬です。ところが実は、「コQ」自体は心不全の治療薬として、古くから日本の医療機関で使用承認され続けている薬です。私も、前医の処方を踏襲して、この薬剤(ノイキノン)の処方を書いたことがあります。しかし、上記のAHAのガイドラインでも明らかなように、現在では、日本でも本気で処方している循環器科の医師はもういないはずです。現在は、「あまり効かないと思われ、米国では推奨されていない」との但し書きがありながら、現在でも保健薬からの取り消しはされていないという馬鹿々々しい(と小生が思う)薬です。「コQ」は重要な体内物質らしいですが、人体で生合成されるので(ビタミンではない)余分に摂取する必要もないし、学問上でも補充することがかえって良くない可能性があると判断できます。