2018年1月17日水曜日

003 薬によるアレルギー (2001.01)

3. 薬によるアレルギー  (2001.01)

アレルギー反応は要するに「出る人は出るし、出ない人は出ない」という体質の問題が一番ですが、出る人も全ての薬に出るのではなく、体質と薬との相性の問題でもあります。なお、ペニシリンやピリン類など比較的アレルギーの出易いといわれる薬と、ほとんど問題にならない薬とがあります。しかし出易いと言っても、出るか出ないかというと、出ないことの方がはるかに多い。他方、ほとんど全ての薬にアレルギーを起こす可能性があります。食物でさえあり得ることだから、驚くことではありません。ビタンミン類の薬剤にもアレルギーの可能性が記載されています。なお、薬の成分は本来の成分以外に錠剤やカプセルの形を作る物質も含まれていますので、それに対するアレルギーが起っていることがあります。アレルギーは中毒と違い量が少なくても出ます。

アレルギー反応性は何度か物質に出くわしている間に一部の人に生じてきます。ということで、以前大丈夫であった薬にも、その後アレルギーが出ることがあります。ただ、患者医者双方に出来ることは、以前アレルギーを生じたことのある薬は記録しておいて、再び用いないことです。以前アレルギーを起こした方は、是非そのことを医師に申告しておいて下さい。それと気管支喘息のある方は、喘息発作というより危険な形でアレルギーが出る可能性があるので、特に初めて用いる風邪薬などは気を付けましょう。私は、薬を飲む時はなるだけ夜間遅くに最初に飲まないほうが良いとお勧めします。もし、医療の手薄な夜間に重篤な反応が起こったら困るからです。

時には複数の薬を服用してどれがアレルゲン(原因物質)か判らないことがあります。次にこのうちのどれかの薬を使いたい時はどうするか? これはケースバイケースで、患者医者双方で協議する他はないと思います。さらに、たまたまある薬を飲んだ時に発疹などが出たとしても、実はその時に食べた食物に原因があったかも知れないし、皮膚の病気で発疹がでたのかも知れない。というように、臨床の場は実験の場と違いますので、曖昧なまま終ることも多いのですが、なるだけ無難な方針(君子危うきに近寄らず)を採ります。なお臨床検査でアレルゲンの陽性度をチェックすることができますが、生じているアレルギー反応の原因について、必ず白黒が付くということでもありません。

アレルギー反応は炎症反応の一種でして、どの臓器にも炎症を起こしてくる可能性があり、いろんなパターンがあります。一番多いのは発熱・発疹ないし皮膚の痒みです。腸炎を起こすと消化器症状を伴うことになります。肝炎や肺炎を起こすこともあります。どのアレルギー反応も問題ではありますが、多くは軽症です。特に問題は急に呼吸困難や血圧低下を来たすアナフィラキシーやショックと言われる反応、そして少し遅れて進行する劇症肝炎や劇症肺炎などでしょう。


注射時のショックの中には、注射針の痛みに対する神経虚脱が原因のことがあり、これはアレルギーではありません。ある種の自律神経失調 (血管運動神経) といえましょう。この場合は採血でも生じることがあります。これをしばしば起こす人に出くわしたことがあります。こういう方は、そういう体質であることを先ず本人が自覚して、どうしても注射が必要な場合は臥床してするべきでしょう。また、体調の不良な方も(不良だから受診しているのですが、特に自律神経が不調の場合)注射が必要な場合は臥床してするのが無難です。