2018年1月17日水曜日

020 血圧測定についてのご参考に (2003.03)

20. 血圧測定についてのご参考に  (2003.03)

心臓がエイッと血液を押し出した際の動脈内の血圧が収縮期血圧(SBP)で、押し出す前の血圧が拡張期血圧(DBP)です。その血圧を直接に測定しようとすれば直接動脈挿入したチューブを介して測定器具で測ります。これは重症管理の際にICUなどで行います。通常の診療でマンシェットを肘の少し上に巻いて聴診器で音を聴いて測定するやり方はあくまでも参考値であって、場合によっては誤差が問題になるかも知れません。ただし、結構信頼できる測定法なので、普通は問題ありません。

外来の予診で測定する血圧がうんと高いと測り方が悪いのではないかと疑われる場合をよく見かけます。血圧は変動の大きい場合があります。血圧測定は脈波の音を聴診器で聞いて(自動血圧計の場合はこの音を器械が聴くのです)決めていますが、マンシェットを締め込んでから、ゆっくり緩めていく時に、最初に聞こえるところの点(この点は結構判りやすい)がSBPで、それが急に聞こえなくなるか聞こえにくくなる点がDBPです。最初にどの位にまで締めこんでおくかは、予想血圧を考えてそれよりは高めの圧をマンシェットにかけておくのです(これは自動血圧計の場合も同じです。予想より高かったら何度も締め込みを繰り返すのも経験からご存知の通りです)。

  そうしますと、人間が聴く場合にたとえ測定が下手ということがあっても、聞き漏らしの可能性が大部分であり、聞こえていないはずの脈波を聞いたと思う間違いは余り起こりません。すなわち、SBP(上の血圧)は高目に間違う可能性は考えにくいのです。同じ理由でDBP(下の血圧)は高目に間違う可能性はあると思います。つまり、上の血圧が高いと言われたら多分そうですが、下が高いと言われても、本当は高くない可能性があります。これらはマンシェットの空気を抜く速度が速過ぎると誤差の原因になります。しかし、空気を抜くのがゆっくり過ぎても問題があり、結局は「そこそこ」の速度で緩めていくのです。

「一回目にひどく高く、もう1回測定したら少し下がった。どちらが本当だ?」どちらも本当と言わざるを得ません。健康な人間が重いものを抱えた状態で血圧を測定されると、かなりの高血圧状態になっているに違いありません。仕事をしたり動いたり怒ったり泣いたりしゃべったりする度に血圧はどんどん変動しています。個人差がありますが、じっとしていても常に変動し易い方がおられます。それでは血圧なんて信頼出来ないではないかという疑問がでるかも知れません。この点については次号(21号参照)でお話しますが、血圧測定は椅子に坐ってから15分位経ってから測定すべきものとの指針があります(実際はむずかしい!)。最低数分は安静にして測定したいものです。家庭血圧測定でもそうあるのが望ましいとされています。


血圧測定はデーターが多い程参考になります。1ヶ月に1~2回だけ外来で何度か血圧を測定しても、判断の材料としては少な過ぎます。最近は自動血圧計が出回っていますので、自宅の血圧データーを記録して見せていただくようにしています。機種としては肘で測定するタイプをお勧めしています。手首や指で測る自動血圧計は個人差や状況によっての誤差はさらに大きくなる可能性がありますので(実際にピッタリの場合もありますが)、医師としてはお勧めしにくいのです。自動血圧計の相性が良いかどうかについて、当院では一度は外来に持ってきて計り比べ(検定)をしています。