2018年1月17日水曜日

022 降圧剤は服用し出すと止められないことはありません (2003.03)

22. 降圧剤は服用し出すと止められない・・・なことはありません  (2003.03)

血圧がずっと高いのを気にしていながら、塩分を減らそうとか運動をしようとか、本来すべきと思われる生活改善をせねばならないとは思っているが、実際には血圧が高いまま放置している方がかなり多いようです。降圧剤を服用しようかと思っても、「一旦飲みだすと止められない」ということで、なかなか決心が出来ないようです。しかし、これは考え違いと思います。

血圧の薬もコレステロールの薬も、その薬を飲んでいる時だけに効果があり、短期間しか飲まなければその効果は一時的です。ある時点でどういう人には薬を続ける方針とするかを端的に言いますと、「薬を止めて血圧のまた上がる人」と、「薬を飲んでいて丁度良い血圧を保っている人」です。前者の場合は判り易いと思いますが、問題は後者です。後者の場合でも医師は「薬を勝手には止めないで欲しいですね」と言います。それで「一旦薬を飲み出したら止められなくなる」との勘違いが起こるのでしょう。しかし、薬を飲んでいるうちに血圧が目安よりも下がってくることは結構ありまして、その時は実際に、薬を減らしたり止めたりします。強調したいことは、「薬を飲み出すこと」を「薬を止めることが出来ない理由」にするのは、薬に対する濡れ衣です。価値観が変わって途中で薬を飲むことが嫌になったら、主治医は賛成しなかったとしても止めることが出来ますしね。

「しかし実際に薬を止めても良いことがあるのか?」ですが、しばしばあります。例えば、寒い冬は高いが季節が緩むと低くなる。精神的や身体的のストレスが多かった時は高かったが、それが減ったら低くなった。運動し出したら低くなった。体重が減ったら低くなった。塩分と水分を摂りすぎていたのを改善したら低くなった。というように、結構多いことです。余談ですが、血圧だけに絞ると、この中で塩分の影響は世間で有名な程は大きくありません。1日摂取の食塩が1グラム増えて血圧が1増える程度であるとの研究データーを見たことがあります。ストレスや運動不足や肥満の影響の方が大きいと思います。
 
話を戻しますと、降圧剤をずっと続けるかそうでないかは、予め決まっていません。その後の血圧のデーター自身が拠り所です。「血圧の高いのが一時的なら、一寸待っていたら良いのであって、慌てて薬を飲む必要はないのではないか?」という質問があれば、初めから血圧の高いのが短期間と判っていればそれは正解です。ただ、いつまで高いかは予測できません。実際は、迷いながら結果的に数年以上放置となっている方がかなり多いです。この年月の積み重ねが血管の老化の進行を潜行させています。もっと「気軽に」服用されて良いと思います。参考までに、コレステロールの薬を服用している人によくあるパターン。「もう半年も薬を飲んでいるし、しかもずっと良い値を保っているので、もう止めてもよかろう」といって急に来院されなくなる。丁度良いコントロールであったのなら、必ず値は悪化します。ただ、内服を中止した後でデーターを取ってチェックを怠らなければ、時々止めて様子を見ようとしても不都合は少ないしょう。血圧の場合も同じことです。


多くの方は結果的には降圧剤を中止出来ないことになります。もともと、多くの人は高齢になってから降圧剤を必要とし出した訳ですから、その後もどんどん年をとるので、あまり生活や体調に変化がなければ自然に血圧が低くなる理由が、季節の変動以外には、あまりないからです。しかし、超高齢になると自然に血圧が下がってくることがあります。こういう場合には、降圧剤を長期間服用していることがあっても、減らしたり止めたりします。