2018年1月17日水曜日

047 丸山ワクチンについてのメモ (2005.01)

47. 丸山ワクチンについてのメモ  (2005,01)

免疫強化薬・丸山ワクチンについては、小生は余り評価をしていません。ただ最近、以前買った丸山千里先生の著書を読み返してみて、学問的に確かな出発点と、癌を治したいという丸山博士や共同研究者たちの情熱とが感じられて、感銘を受けました。確かに丸山ワクチンによって著効を得たという他はないと思うような症例を得ていること。しかも、他の菌体由来の物質が癌の治療薬として認可されているのに(溶連菌由来のピシバニール、かわらたけ由来のクレスチン、しいたけ由来のレンチナンなど)、丸山ワクチン(結核菌由来)がいつまでたっても認可されず、治験薬止まりにされ続けているという義憤など心情的にもよく理解できます。

丸山ワクチンが認可されないことについては、丸山博士が癌学会からは傍流の領域なので不当な扱いを受けていという思いがあります。確かに大きい学会のボスの筋からは厚生省のバリヤーも不当に低いことはあり得ることです。しかし、こういう菌体成分由来の免疫強化剤が癌治療に保健薬として認可されている国はそもそも稀です。多分、我が国だけでしょう。むしろ、前記の3種類の治療薬を認可したこと自体が「怪しい話」なのです。実際、医療費の莫大な浪費を引き起こしてしまったのです。どれもダメというのが正解だったと思います。EBM(証拠に基づく医療)の観点から見直す必要があります。➜(注)なお、EBMということも、一時「お墨付き」のようなトレンドでしたが、主導者が主張するほどは「怪しいところがない」とは言い切れないと私は感じていました。どうも最近は、そういう反省期的な流れも出てきているようです。

 なかでも、クレスチンはあらゆる分類の全ての薬剤の中で売り上げ日本一を続けた大ヒット商品でしたが、裏を返せば犯罪的状況といえるかもしれません。そういう状況になった理由の一つは、現場の医師が診療をスムーズにこなすために安易に処方したからですが、そもそも薬価が高過ぎる。丸山ワクチンも含めて大方そうなのですが、寿命を延長し得るという客観的な証拠がはっきりしないと、「自覚症状などが良くなった」との曖昧な存在意義を主張し出します。百歩譲って、その程度なら薬価はべらぼうな値を付けるべきではありません。

私が主治医であった患者さんにおいてもそうでしたが、丸山ワチンを希望により使用する場合は、抗癌剤が使用されていたり、既に状態が末期という方が多く、悪い治療条件の方が多いのです。いずれにしても、何らかの効果があった症例の経験や伝聞に直接出くわしたことは、私にはありません。丸山ワクチンの発表から既に40年は経っていると思います。たとえ学会から理不尽な扱いを受け続けていても、少なからずの症例に有意に治療効果があるのなら、この情報化時代に隠しおおせるものではありません、流石にその真価を認めざるを得ないと思います。現場の主治医は、効果があると期待するものがあれば必ず飛び付きます。
一般の方の大いなる誤解に学閥云々があります。自分の診療での治療効果が良くなるのなら学閥も関係ありません。そもそも、自分が属する学閥の開発した治療法などほとんど無いに等しいものです。大方は、良きにせよ悪きにせよフロンティア精神旺盛の米国などの外国からの輸入なのですから。


癌というのは予測の付かない経過になる場合があります。手術で取り残しているはずだから、早晩再発するだろうと思った症例で、治ってしまった場合もありました。稀ですけど。丸山ワクチンは確かに何らかの条件の場合に著効があるのかも知れません。しかし、現在、その条件を明らかに出来ないのであれば、日本中の多くの患者さんや家族に途方もなく過度の期待を抱かせるのは善くはないと思います。こういうことは、他の治療法についても同じことが言えると思います。