2018年1月17日水曜日

023 降圧剤の種類は? (2003.04)

23. 降圧剤の種類は?  (2003.04)

「血圧」の高さ=「血流」の多さ×血管の「抵抗」です。電圧=電流×抵抗と同じです。血圧を低くしようとすると、その式からすれば、血流の流れを減らすか、血管の太さを緩めるかのどちらかしかありません。降圧剤の作用は、実際にこのどちらです。

血流の流れを減らす降圧剤には、「利尿降圧剤」があります。利尿降圧剤は体液を尿から体外に出すことにより、心臓や血管の中の血液の量を減らすことによって血流の流れを減らして血圧を下げます。これと逆のことは沢山の食塩と水分を摂取することです。
一方、βブロッカー(β交感神経遮断剤)という薬剤は、心臓の筋肉の収縮の程度(ポンプ力)を減らすことによって血流の流れを減らして血圧を下げます。一般に、心拍数も落ちる傾向にあります。量が多すぎると心不全になります。一見矛盾するようですが、少量から始めての心不全治療薬にも用いられます。米国では合併症のない高血圧にはこれらの薬が第一選択薬とされています。これらは薬価の廉い薬が多いのです。糖代謝や脂質代謝には良くない影響があると言われますが、個人差もあります。欧米人と日本人では生活や体質が異なることもあるかも知れませんが、尊重すべきのように思います。

主に細動脈血管の太さを緩める降圧剤は、要するに「血管拡張剤」でして、多くの分類の降圧剤がこれになります。わが国で最も普及しているのは「カルシウム拮抗剤」といって、細動脈の筋肉の収縮性を抑制することにより血管を拡げます。同じカルシウム拮抗剤のなかでもいろんな種類があり、それぞれ癖があるので、各個人の状態によって使い分けしています。例えば、カルシウム拮抗剤の中には心拍数を増やすものや減らすものやどちらでもないものなどいろいろあります。日本人の狭心症にはこのカルシウム拮抗剤が最も多く用いられるので(心臓の冠動脈を拡張させる)、こういうことと相まって、この種類の降圧剤が日本では多く用いられています。
αブロッカー(α交感神経遮断剤)も同様に血管拡張性です。これは細動脈に分布している血管を収縮させる種類の自律神経の働きを抑えることによって血管を拡げます。この薬剤は排尿障害や前立腺肥大症状の改善に効果があり、今では泌尿器科でよく用います。循環器科で用いる頻度は減っています。
同じような血管拡張性の降圧剤には昇圧作用のあるアンギオテンシンという物質を体内で合成する酵素を抑制する「ACE阻害剤」や、アンギオテンシンの作用を阻害する「アンギオテンシン受容体拮抗剤(ARB)」という薬剤があります。これらの薬剤はいずれも腎臓や心臓などの臓器機能の保護作用があると言われ注目されています。しかし、矛盾するようですが、既に腎臓の機能がある程度以上悪い人に使用すると腎機能がさらに悪化する可能性があると言われて使いにくくなります。また、ACE阻害剤は副作用として咳や喉のイガイガ感が生じることがあるのが有名です。これは女性の方に多いです。ARBは最も新しい降圧剤で、ACE阻害剤と似ていますが、咳の副作用はないことになっています。
血管拡張剤には他にも数種類の薬剤がありますが、上に述べた種類以外のものは最近ではほとんど用いられません。


上記のうちで、その人の血圧のパターンや、合併症の有無や、薬価やその他の条件により、どれかの1剤やいろんな組み合わせとして選択されます。現在では、カルシウム拮抗剤・ACE阻害剤またはARB・β遮断剤・利尿降圧剤がよく用いられます。