2018年1月17日水曜日

017 病診連携・診診連携: これを利用されるのが適切です (2002.10)

17. 病診連携・診診連携: これを利用されるのが適切です  (2002.10)

物事は何でも手間とリスクとの天秤にあると思います。重症なら別ですが、初めからわざわざ遠くで時間の長くかかる大病院に受診しなくても良いと思います。先ずは「かかりつけ医」に受診しておいて、「一寸、判らないな」とか「一寸、難しいな」とかの場合に、病状に応じた専門の病院や医院に紹介してもらえば良いのです。逆に、専門病院で診断と治療方針が決められて、その後は経過観察しながらの治療という場合は、最近は専門病院からかかりつけ医に紹介があって、1年に数回は専門病院でチェックを受けるだけというケースが多くなっています。これらを「病診連携」と言います。

私の姉は大阪に住んでいますが、元気でピンピンしており単純な高血圧症だけなのに、10年間も大阪大学付属病院に通院していました。私は「何でそんなことで大学病院にかかっているのか」と思いました。大学でないと扱えない病気を持った患者さんの間にこういう病気と言えないような患者さんが紛れていては、他の患者さんの待ち時間の邪魔です。本当は自分には関心を持ってくれないはずなので、自分にとっても良くありません。

風邪を引いて大きい病院に受診するのも同じことです。私どもなら風邪でも大変だなと思って診ますが、大病院などに行くと医師は内心「何故、風邪くらいでここに来るのか」と思うでしょう。しかし、「風邪といっても中には肺癌や肺結核や何かとんでもないような怖い病気が紛れているのではないか?」という考えもあるでしょう。それはその通りですが、数日程度の風邪症状では考え過ぎです。2週間も咳が治らないとかいうなら、そろそろおかしいなというでしょうが、この場合でもかかりつけ医の専門次第でもありますが、そこで胸部写真でチェックすれば肺のことの大体は判ります。万が一に喉頭癌のようなものなら困ると思えば、念のために耳鼻科にも診ておいてもらいましょうということになります。これも近所の医院で良いでしょう。

なお、風邪で先ず内科か耳鼻科かということも問題のひとつですが、頼りになる医師と思えばどちらでも良いと思います。一長一短でしょう。互いの医師がちゃんとしていれば、長引く場合には、互いに他の医師にも一度診てもらった方が安心ですと勧めることになります。私の場合は近所の同じような考えの耳鼻科の先生と互いに補完し合っています。これを「診診連携」と言います。大抵の病気は地域内の医院や病院の間で補完し合って完結し合えば、患者さんの手間も少なくなると思います。一般には診診連携は上手く機能していないことが多いのではないかと思います。上手く機能しないのは医師の側の姿勢や機能に問題があることもありますが、患者さんの意識にも問題があることが大いにあると感じています。


余談ですが、いつも腰痛で整形外科医院にかかっている人が風邪に罹った場合、わざわざ内科にかからなくて、整形治療のついでにその整形外科に診てもらうのも一つの選択でしょう。逆に、いつも心臓で内科医院にかかっている人がちょっと腰が痛くなった場合、取り敢えずその内科に診てもらうのも一つの選択でしょう。簡単に治らない時には、別のところに紹介してもらえばよいと私は思います。医師によっては他の領域についても、関心を持って多少は勉強している場合があります。私自身は、肩痛・腰痛・膝痛などは関心を持って診療しています。こうすることで、適切な医療ができて、ご本人の手間も少なく、医療費の節約になります。