2018年1月17日水曜日

069 家庭血圧計についてのアドバイス (2007.05)

69. 家庭血圧計についてのアドバイス  (2007.05)

血圧に何らかの問題のある中年以降の方は、家庭に血圧計を常備するのがイロハのイです。家電メーカーの場合や医療器具メーカーの場合などありますが、どれが良いとも言い切ることは出来ません。当院には1種類だけいつも在庫を置いていますが、家電ショップやドラッグストアで買われても良いと思います。廉価なものはそれなりの不都合のリスクが何がしか多いという一般原則はあると思います。値段だけではなく測定部位により種類があります。通常は肘関節の辺りで測定するものですが、手関節(リスト)や指先で測定するものもあります。多分、多くの医師は肘測定のものを勧めると思います。では、指測定は不正確かと言いますと、ちゃんと役立つものもあるでしょう。しかし、リストから指と先になるに従って、測定誤差が生じるリスクは高いことの覚悟は必要かと私は思います。

血圧計は少なくとも初めに自分に相性が好いかどうか(自分には誤差が少ないかどうか)検定すべきと思います。当院では、全員にこれをするようにしています。外来にその器具を持って来て頂いて、ナースが測定する通常の値と何度か繰り返して比較するのです。これは器具が故障しているどうかだけではありません。同じ器具でも奥さんには誤差が少ないがご主人には誤差が大きいという可能性があるかもしれません。誤差が大きい場合の対応は、ケースバイケースです。

どの時刻やタイミングで家庭血圧を測るか。日本医師会が数年前に作成したポスターに「1日1回、朝の血圧を測りましょう」というのがありました。立派な専門家の監修を受けているものですが、私はそれを見て驚きました。確かに、高血圧のかなりの方に未明~早朝から血圧が不都合に上昇してくる場合があります。これは自律神経の日内リズムが不適切になっている訳で、こういう時間帯に心筋梗塞や脳卒中という重篤なイベントのリスクが高いということです。実際には、起床前から次第に血圧が上昇する場合と、起床した途端に血圧が上昇する場合とがあるようです。それに対しては確認して対処しましょう。しかし、だからと言って朝以外の血圧には無頓着で良いと受け取られる指導は、偉くなりたい専門家の自己の希望的仮説への我田引水だろうと思います。血圧は乱高下も悪そうですが、高い時間が長いのも悪いはずです。つまり「高さ」☓「時間」の積分だと思います(証拠は知りません)。イベント発生リスクの基盤である動脈硬化の進展リスクという本来の基本の話です。

初めは自分の血圧の変動パターンを知るためにいろんな時間帯で測定すべきと思います。邪魔くさかったら、今日は朝、明日は夕と最初はむしろ気まぐれのタイミングで測定しても良いでしょう。その方が、朝だけとか夜だけとかよりも情報が多い。大事なことはそれを血圧ノートに記録しておくことです。血圧ノートは無料で製薬会社が持ってきて呉れるので困りません。数字を書かずにグラフに点だけで記録しておくと、「パット読んで一瞬にして判断が出来る」ので素晴らしいのです(数字だけの記録の場合は、読むのに消耗するだけでなく、把握し難い)。数字を書くと短期間に何度か測定した場合に記録するスペースがないことも不適切です。折れ線を入れるのも適切とは思えません。自分が知りたいように自由に測定して「点」だけで記録するのがお勧めです。毎日測定しなくても良いし、何度も測る日があっても良いのです。外来での血圧測定だけでは明らかに不十分です。

血圧ノートによる日頃の血圧の測定値の呈示もなく、口頭でゴジャゴジャ話合っても、実態は不明のままで、いい加減なことになるだけでなく、無駄な消耗をしてしまいます。そういうことで、通院の際には毎回血圧ノートを見せていただくように指導しています。極端の場合は1回しか記録がない場合もありますが、「血圧ノート」という意識をお持ちであるということで、私は「可」としており、「次はもう一寸増やして下さい」とお願いしています。