2018年1月17日水曜日

028 血圧測定や血圧管理についての蛇足 (2003.10)

28. 血圧測定や血圧管理についての蛇足  (2003.10)

頭を捻ってこのシリーズ を書いていると、「ありゃ、これはどうだったのか」「あれ、こういうこともあるしなあ」というように、どんどん書き足らない物事が出てきます。この号は20号21号の補足です。拡張期血圧(下の血圧、DBP)について。そういえば、昔は収縮期血圧(上の血圧、SBP)の高いのはあまり心配はないが、特に下の血圧の高いのが動脈硬化に悪いということが言われていたように思います。何故そういう結論になっていたか。勉強不足で正確には判らないですが、おそらく、最初の頃の大規模臨床研究の際に取っていたデーターを、何らかの理由で(物理学からの外挿?)、初めからDBPに絞っていたからかもしれません。最近までの多くのデーターでは、SBPはDBPに劣らず重要だということです。具体的な血圧管理の目安は21号に書いたとおりです。

血圧測定の結果、「はい、13540です」と答えますと、DBPが低過ぎて患者さんが不審や不安になられる事態に遭遇します。これについてコメントします。20号でも述べましたが、血圧計での測定はあくまでも測定値ですので、本当の血圧とは違うことがあります。先ず、DPBはSBPに比較して判断しにくいことがあり、被検者によっては本当に判りにくいことがありますので、真の値が決定できないことがあろうかと思います。ただし、多くの方ではDBPもしっかり判ります。実際に測定上でははっきりとDBP=ゼロという場合もあります。どこかに血管の細いところのある人は、マンシェットが締まっていなかってもドッドッという音が聞こえる場合です。そういうことが、血圧以外の診断の契機になることもあるかも知れません。
そして、DBPの場合は基準上限値(拡張期高血圧)の目安はありますが、基準下限値などはないのです。一方、SBPの方は基準上限値(収縮期高血圧)も基準下限値(低血圧)もあります。DBP(つまり、下の方の血圧値)の測定値が低く過ぎて問題になることは、一応ないと考えて頂いて良いと思います。

最近、高血圧専門医の指導による医師会のパンフレットに、「一日一回、早朝に自己血圧を測定しましょう」というのがあって、私はびっくりしました。要するに、早朝高血圧は脳卒中や心筋梗塞の発作のキッカケになるので、問題だということです。それは良いのですが、血圧の測定が朝だけで良いなどとはナンセンスも良いところです。早朝高血圧は発作のキッカケに重要かも知れませんが、そもそも、動脈硬化が進むのは朝の高血圧のみが原因ではなくて、1日のうちで高血圧の時間が長くその程度が大きければ、その積み重ねで(いわば積分値)、動脈硬化が進み、その挙句に心筋梗塞や脳卒中が起こり易くなるのでした。


以下が、私の正しいと思うことです。血圧の変動は個人によって個性があり、各自で自分のパターンを知っておく必要があります。先ず、いろんな時刻の血圧を測定して自分のパターンを知り、その後で自分の測る時刻を選んだら良いと思います。それなりに落ち着いていたら、別に毎日測定しないでも良いと思います。今日はこの時刻、今は暇だからあの時刻とかも悪くないし、測定しない日があっても良いと思います。ただし、変動の大きい時とか、どうも血圧が高そうな症状や、低そうな症状がある時は、その都度測る方が良いと思います。また、たまには一日に何度も測定する日を作ると、自分のことが自分で良く判って好いのではありませんか? 測定したデーターは血圧ノートに記録して、受診毎に主治医に見せると、効率のよい診療を受けられます。このシステムに慣れてくると、主治医の私は血圧ノートを数秒見ただけで、その方の血圧の状況が良く判ります。患者ご本人も、そのデーターを見て自己判断することができます(専門医監修の血圧ノートの記録法も私には大問題があると思われ、私の患者さんにはそれらと異なる方法を指導しています)。