2018年1月17日水曜日

013 成人病の管理をさせて頂いて気になってきたこと (2002.07)

13. 成人病の管理をさせて頂いて気になってきたこと  (2002.07)  

内科中心の開業医をしていますと、高血圧症、高脂血症、肥満、糖尿病などの動脈硬化の危険因子を有する状態の管理のお手伝いをすることが多い。これらは関係学会のガイドラインを参考にして、検査値の目標を設定して、生活改善の指導や薬物投与の組み合わせでもって管理します。そういう管理をしていても、あくまでも大規模の臨床研究から得られる統計学的な予測が拠りどころであるだけで(マクロ医療)、個々の患者さんの将来の健康上の予測(ミクロ医療)については、実は不確実なのです。それでも現代の臨床医学で認められた指針を守ることは、一応は、良いこととしているのです。一方、はっきり判らないことには時間と金と精神を浪費しない方が良いと思います。
無責任なマスコミがしきりに流すような、研究室の中だけの一寸した試験管内のデーターや短期間の動物実験の結果だけでは、人間の個体や全体に適用(外挿)することなど全くできません。

このような成人病の管理を長くさせてもらっている患者さんについて、まあまあのコントロールが続いているうちに、これまでの自分の対応が良かったのかと疑問を抱くことが少しずつ出てきました。その一つとして、そのうちに手遅れの癌が見つかって、程なく亡くなられてしまうことがあります。私は請け負っている範囲外の検査を勝手にしない方針ですが、胃カメラ・大腸カメラ・腹部エコーくらいはしつこく勧めておけば良かったと思うのです。肺の方は時には胸部写真を撮りますのでよいのですが。しかし、検査の押し売りのように受け取られるのも嫌ですし。勿論、他の医療機関や住民検診を利用されても良い訳です。

二つは内科的には問題ないのですが、膝が痛いとか腰が痛いとか、力が入らずフラフラするとかで、老後に非常に辛い生活を余儀なくされる方が少なくありません。私は思うに、現代は余りに生活習慣病(成人病)や内科的な健康に関心が偏りすぎて、運動機能の維持向上への関心が少な過ぎる。運動機能というと特別の興味を持っている人の問題であるかのようです。私は10年余り開業医として皆さんとお付き合いしてきて、筋肉や関節の機能維持向上の重要性に気付いたのです。それにはより正しい姿勢で筋肉を維持向上させる動きを繰り返しする他はありません。


例えば、「変形性膝関節症」です。電気治療、鍼灸療法、関節内注射、湿布なども良いでしょうが全て受身です。そもそも下肢の筋力低下によって悪循環を来たしている状況です。やはり何歳になっても筋力の向上による若返りと肥満の是正、そして正座のような悪化姿勢は取らないという積極的な対策が重要なのですが、年寄りには無理ですよというような反応が返ってきます。何歳になっても出来るし、コレステロールの値を30下げるよりも重要だと思います。痛くて歩けない人は補助金属付きの膝のサポーターを用いての積極的な歩行を指導したり、大腿四頭筋の筋力アップの簡単な方法を勧めたりしますが、本気で聞いてくれる人は一部だけです。そもそも、整形外科でこういう口だけの治療(エネルギーが要って医療点数が増えない)があまりされていないように思います。「腰痛症」も皆さんは骨の変形とか骨粗鬆症ばかりを思っていますが、腰痛も多くは筋力の低下が主な原因であったり、骨の変形が主原因でも筋力低下が悪循環を来たしているのに違いないと思います。少しでも良い姿勢を無理にでも保っての年齢に応じた筋力アップを真剣に前向きに考える必要があります。時々からで良いのです。姿勢の悪い人が多いので、ここでも補助金属付きなどの腰帯を自分のタイミングに応じて利用されるのが良いと思います。ドラッグストアや通信販売でも入手できます。